インドの銀行業務は、インド準備銀行(RBI)に管理・監督され、1949年銀行業規制法および1999年外国為替管理法(FEMA)によって規制されています。日本企業がインドの銀行で口座を開設するには、事前に基本税務番号(PAN)および物品サービス税(GST)システム登録などの必要な手続を行う必要があります。
インド全土で統合決済インターフェース(UPI:スマートフォンを利用して銀行口座間の送金を即時に決済するシステム)が普及していますが、最近では、外国企業もUPIを利用できるようになりました。
インドの外国為替取引は厳格に規制されており、外国企業には特定のルールが適用されます。例えば、輸出収益のための外貨口座を保有することはできますが、すべての国際取引について定期的に報告する必要があります。
また、インド国外からの事業資金の調達を目的として海外から借入れをする「対外商業借入」(ECB)について、各種の規制があり、借入れを行うことができる主体、融資を提供できる機関、融資の最低返済期間、融資金を使用できる範囲、融資の上限額(金利その他の手数料を含む。)等について詳細なルールがあるため、これらを遵守する必要があります。
すべての国際取引は認可された銀行を通じて行い、外国投資報告管理システム(FIRMS)ポータルを通じて報告する必要があります。
配当金、ロイヤルティ、サービス料などの送金は、適切な税務処理を行って必要書類を整えれば、事前に許可等を得る必要はありません。配当金は、正しく納税がされる限り、制限なく本国へ送金することができます。ロイヤルティやサービス料については、契約に基づき、送金額が国内売上の5%、輸出売上の8%以内に留まる場合は、事前に許可等を得る必要はありません。
インドでは、デジタル・バンキング推進の取り組みにより、銀行業務が近代化され、電子取引や文書のデジタル化が進められています。日本企業には、企業向けのインターネット・バンキングやAPIバンキング、即時グロス決済(RTGS)などのさまざまなデジタル・バンキングの選択肢があります。ただし、情報セキュリティを確保することとデジタル取引について定期的に確認し不正や問題が起こっていないかモニタリングすることが不可欠です。
執筆者:インド法弁護士 シュレヤ