1 はじめに
インドの食品市場は、14億人を超える消費者と、急速に現代化する中間層を擁し、日本の食品メーカーや輸出業者にとって非常に魅力的な市場となっています。インドにおける日本食への関心も日に日に高まっています。
しかし、インド食品に関する法規制は、非常に複雑な上に、変化し続けています。日本の食品メーカーや輸出業者にとって、インドの法規制や最新のビジネス動向を正しく理解することは、成功の鍵となります。
2 規制の概要と直近の改正
(1) なぜ「インド」なのか?なぜ「今」なのか?
インドの食品・飲料分野は、2030年までに1.5兆ドル規模に達すると予測されており、特に都市部では、輸入食品、中でも高品質で健康志向の食品の需要が急速に高まっています。
日本の食品は高品質で知られており、今後、人気の高まりが期待されますが、2024年9月以降、インドへの食品輸入に関する法規制が大幅に変更されており、これに対処する必要があります。
(2) 主要な規制当局
(a) インド食品安全基準局(FSSAI)
FSSAI(インド食品安全基準局)は、国内で流通する食品の安全基準を策定・施行し、輸入や販売に必要な許認可の管理・監督を行う政府機関です。
すべての輸入業者はFSSAIへの登録および輸入ライセンスの取得が義務付けられており、これらを完了しなければ通関は認められません。近年では、デジタルインフラの整備が進み、複数の関連機関と連携して申請を効率化する「食品輸入審査システム(FICS)」が導入されています。
2025年現在、FSSAIは書類要件の厳格化や許認可基準の見直しを通じて、監視体制を一層強化しています。
特に重要な変更点は、2024年9月1日に施行されて「外国食品製造施設登録(FFMF)」の義務化です。対象となる食品は、乳製品、肉類・水産物、卵パウダー、乳児用食品、栄養補助食品などで、日本企業の市場参入に大きな影響を及ぼしています。ReFoMポータルを通じた事前登録が必須となっており、通常3〜6か月の手続期間を要します。
(b) 外国貿易総局(DGFT)
DGFT(インド外貨取引総局)は、越境取引を行うすべてのインド国内の事業者に対し、「輸出入者コード(IEC)」の取得を義務付けています。インド国内の事業者は、IECがなければ、適法に外国から製品を輸入することができません。
(c) 間接税・関税中央委員会(CBIC)
CBIC(中央間接税関税委員会)は、通関および関税評価を管轄しています。
輸入に際しては、「商品の残存賞味期限が全体の60%以上であること」が重要な要件とされており、たとえば賞味期限が12か月の製品であれば、輸入時点で7か月以上残っている必要があります。
日本企業がこの要件を満たすことに苦慮するケースは少なくなく、生産・出荷・通関のタイミングを適切に調整することが不可欠です。
FSSAI(インド食品安全基準局)は、今後の規制変更は、毎年7月1日を実施開始日とすると発表しており、これにより日本企業はコンプライアンス体制をより計画的に整備しやすくなります。
(インドにおける食品輸入規制の最新動向と実務対応②に続く)
執筆者:インド法弁護士 シュレヤ(翻訳 弁護士 辻陽加里)