売買契約、賃貸借契約、リース契約など契約の内容にかかわらず、商取引について合意を形成し、契約を締結することは、合意に至った当事者の法的責任を明確にするために非常に重要です。商取引のあらゆる局面において、契約の締結は不可欠です。
商取引契約とは、一定の行為を行う義務や反対に一定の行為を行わない義務を負わせるなど、契約当事者に法的拘束力を及ぼす合意を指し、雇用、賃金、リース、保険、融資、従業員の安全など、ビジネスに関する全ての契約を指します。
商取引関係は交渉からスタートしますが、その交渉の内容を書面化し、契約書を作成することで、法的拘束力を持たせることができます。
合意とは、相互に対価関係のある約束をいいます。重要なのは、全ての契約は合意といえますが、全ての合意は契約とはいえず、法律上強制しうる合意のみを契約といいます。
インドにおいて契約は、1872年に制定されたインド契約法と当該合意及び契約に適用される特別法によって規律されます。二者間の商取引は、まず契約条項によって規律されるため、契約条項は、契約における当事者の権利、義務その他の条件を考慮した上、慎重に作成することが非常に重要になります。
商取引契約の解釈
商取引契約の解釈については多数の裁判事例があり、インド裁判所がその解釈を明らかにしています。
例えば、ボンベイ高等裁判所はNovartis Vaccines & Diagnostics 対 Aventis Pharma Limited(仲裁申立第763号、2009年)において、商取引契約や合意を検討するにあたっては、裁判所は、当該契約の全ての条項を法の枠内で考慮すること、ビジネスの性質と目的を踏まえて契約条項を解釈すること、契約条項や契約全体の記載が一見明確であっても、裁判所は当該事案の事実関係を考慮する必要があること、契約書中の用語や文章、条項、章のそれぞれの関係を契約書全体に亘って検討するものとし個々に独立して解釈してはならないこと、民間取引に関する文書を解釈するにあたっては当事者間の信頼や信用、委任関係、認識についても考慮される必要があることを判示しました。
したがって、前述のとおり、契約当事者間の権利・義務を確定させるためには、契約条項が、契約や合意に基づいていることが重要になります。